ボルネオ島は"マレーシア"と"インドネシア"、そして"ブルネイ"の3つの国に属し、世界で3番目に大きい島 (日本の約2倍!)。
南シナ海(西と北西)、スールー海(北東)、セレベス海とマカッサル海峡(東)、ジャワ海とカリマタ海峡(南)に囲まれています。
日本から最も近い熱帯ジャングルで、氷河期の影響も受けず、およそ1億年も前にできた貴重な自然には、稀に見る多種多様な生命が息づいています。
私たちがよく口にする、ポテトチップスやカップラーメン、チョコレート、化粧品・・これらの原材料名に表示されている「植物油(油脂)」。 植物油とだけ表示されているものの多くは、「パーム油」なのです。
パーム油は、"アブラヤシ"というヤシの実から採取されます。アブラヤシは、一般的にイメージされるココヤシ(ココナッツの木)とは異なり、背が15~20mと低く、4㎝~5㎝の小さな赤い実を1房に何千個も実らせます。
"パーム油"は、年間を通じて大量に収穫できて単価が安いだけでなく、コレステロールが低くて健康によく、食品の風味を変えないなどから、食用需要を中心に世界的に生産量が増えています。
この"パーム油"の世界最大の生産地がマレーシア、次いでインドネシアと、2国で世界の約85%を生産しています。
パーム油の使用は、世界で約8割が「食用」。
残りが化粧品や洗剤、ペンキやプラスチック加工品などに使われています。
【食用例】
チョコレート、ショートニング、インスタントラーメン、菓子や外食店の揚げ油、冷凍食品 etc
【非食用例】
化粧品、石けん、洗剤、工業用潤滑油、塗料etc
パーム油の主要生産国のひとつであるマレーシア。
天然ゴムに代わり石油系ゴムが主流となったため、マレーシア政府の国策としてパーム油の生産が推奨されたことをきっかけに1970年代以降、栽培面積が急速に増加しました。
パーム油の食用需要が世界的に増加し、アブラヤシの大規模なプランテーション(農園)が急速に拡大しています。
拡大すると同時に、ボルネオの熱帯雨林は年々減少の一途をたどり、深刻な問題を引き起こしています。
洪水の被害や水質が悪化するだけでなく、野生動物が移動して生きていくために必要な川沿いの森が失われ、動物への影響が大きな問題となっています。
近年では、パーム油は食用需要だけでなく、自動車の燃料であるバイオディーゼル燃料としても注目され、さらなる需要の増加が想定されています。
キナバタンガン川の下流域には、オランウータンやテングザルほか10種の霊長類、ゾウやサイなど絶滅の危機に瀕した動物をはじめ、多種多様な野生生物が生息しています。
ところが、この貴重な生息地である森林が農園に変わり、木をつたって移動するオランウータンは分断された森に隔離され、農園を通らざるを得ないゾウは人との接触が増えて人が仕かけた罠にかかるなど、動物への影響が懸念されています。 このまま何もせずにいれば、たくさんの野生生物が地上から消えてしまいます。
地球上の森林面積の多くをも占めているマレーシア・ボルネオ島。1970年代にはボルネオの86%を覆っていた熱帯雨林が、2005年には60%に減少し、原生林はわずか「5~10%」程度しか残っていません。
熱帯雨林は、空気中の炭素を固定しています。貴重な熱帯雨林をもつボルネオの森が失われると、炭素が二酸化炭素(CO2)となって空中に排出され、地球温暖化をさらに進めることにもなるのです。
森が狭くなり追い詰められた野生生物がいる一方で、パーム油産業で生計を立てている現地の方もいます。
私たち消費者もまた、パーム油を完全に避けて生活することはもはや不可能といっていいかもしれません。
もし今パーム油の使用をやめたとしても、大豆など代替作物で別の問題にすり変わるだけでしょう。
1952年の創業当初より、人と環境を考えて植物原料を用いた製品づくりに努めてきたサラヤは、パーム油の使用をやめることが問題の解決にはならないと考えました。
そこでパーム油とかかわり、野生生物や森を守りながら生産者や消費者の生活も維持していくため、2004年から「ボルネオ環境保全活動」を開始し、環境保全と原料調達の両面からこの問題に向き合っています。
「ボルネオ保全トラスト(BCT)=Borneo Conservation Trust」とは、マレーシア・サバ州政府から認められたトラストで、キナバタンガン川沿岸の熱帯雨林だった土地を買い戻して、野生生物が行き来できる「緑の回廊」を回復させる計画などを行っています。