Health Solution 世界の健康づくりに貢献する
生活習慣病予防への貢献を目指したサラヤの挑戦
カロリーゼロの自然派甘味料「ラカント」の開発
石けん液「シャボネット」は、流行していた感染症の予防を目指した商品でした。やがて高度成長期に入り飽食の時代を迎えると、2型糖尿病や肥満症といった「生活習慣病」が新たな社会問題に。サラヤは、食生活の改善で予防できるこの問題を新たなテーマに見据えます。創業から続く「予防」の理念を「生活習慣病の予防」へと発展させ、食生活の改善に貢献する甘味料の開発に着手したのです。
低カロリー天然甘味料「トーカット」
健康志向が高まっていた1980年代。砂糖の代替品として低カロリーをうたった化学的な合成甘味料が登場しましたが、安全性などが取り沙汰されていました。そんな時代背景のなかでサラヤが挑戦したのは、安心して使用できる天然素材を原料とした低カロリー甘味料の開発です。
様々な天然素材を試し研究を重ねた結果、薬用効果や甘味が古くから知られる甘草(かんぞう)にたどり着きました。そして1984年10月、業界に先駆けて自然派素材を使用した低カロリー天然甘味料「トーカット」を発売します。
新たな原料候補、「羅漢果」という果実
業界に先駆けて開発した「トーカット」ですが、原料である甘草やステビアには独特の甘さがあり、より上質な自然派原料を求めて研究が続けられました。そうして出会ったのが、のど飴に使用されていた「羅漢果」という植物です。
当時の日本で入手可能な羅漢果エキスは、苦味や焦げ味が強く、甘味原料として使っている商品は見かけられませんでした。ところが分析を進めると、羅漢果に含まれる甘味成分は砂糖に近い甘味質を示すことがわかったのです。
「羅漢果」の原産地、中国・桂林へ
1993年、その報告を受けた創業者・更家章太は、研究者とともに直ちに羅漢果の産地である中国・桂林市に向かいました。
桂林では市長をはじめ行政関係者が迎え、羅漢果の栽培地へと案内してくれました。向かった先は市街地から遠く離れた山の急斜面。車も入れないぬかるんだ山道を徒歩で登り、やっと辿り着いた羅漢果畑には、日本では見ることができない熟した羅漢果がたわわに。その場でもぎ取り、初めて味わう新鮮な果実。口いっぱいに広がる、上品で強い甘味—。
サラヤは、栽培地でしか調達できない上質な羅漢果を原料とする、カロリーゼロの天然甘味料の開発に挑戦することを決意します。
山の斜面で栽培される羅漢果。世界の羅漢果の90%は桂林で栽培されていると言われています。
国外持ち出し禁止の「長寿の神果」
しかし、羅漢果を原料とするためには、甘味成分を抽出する技術開発のみならず、難題が山積していました。
羅漢果は、中国では古くから民間薬として親しまれ、あらゆる病の予防と治療に効果を発揮する「長寿の神果」として伝えられる貴重な果実。政府が生の果実の国外持ち出しを禁止し、保護植物に指定しています。さらに、中国の広西チワン族自治区を原産地としており、産地は限定。また、ウリ科の植物であり、ブドウのように棚を作って雌雄別株での栽培が必要とされるなど、大変な手間がかかるうえに栽培自体が難しいのです。
サラヤは、栽培育種、栽培技術、農薬・殺菌剤の管理に至るまであらゆる研究を進めました。
カロリーゼロの天然甘味料「ラカント」
課題を一つひとつ解決しながら1995年、ついに羅漢果を原料とするカロリーゼロの自然派甘味料が誕生しました。それは、羅漢果エキスにトウモロコシなどの発酵から得られる天然甘味成分「エリスリトール」を加えることで実現した、風味、風合いともナチュラルで高級感のある全く新しい甘味料。巡り合った原料への思いを込め「ラカント」と命名されました。
固形、顆粒の2タイプで発売された「ラカント」
地域の発展と農民の生活向上とともに
1998年、サラヤは桂林市と羅漢果甘味料開発の共同ビジネス契約を締結。
さらに農家とも契約を交わし、農薬使用などの栽培方法を取り決めました。契約農家は安全性の高い羅漢果を栽培、技術指導で収穫量も増え、高い収入が得られます。
これによって、羅漢果の品質が確保されるとともに、持続可能な羅漢果栽培が果たされていきます。
「高純度 羅漢果エキス」の抽出に成功
サラヤは「ラカント」発売後も、可能性豊かな羅漢果の研究を続けました。そしてその研究は大きな発見につながります。羅漢果の甘味成分の純度をさらに高めていくと、他の植物系甘味料にはない特有の甘味質を有することがわかったのです。独自製法で抽出に成功したその甘味成分「高純度羅漢果エキス(配糖体)」は、なんと砂糖の300倍以上の甘さ。
サラヤは、現地研究機関の協力を得ながら「高純度羅漢果エキス」の製造技術を確立(2001年特許取得)。さらに、甘味度を砂糖と同程度に調整することにも成功し、1999年、「ラカント」にスペシャルの「S」をつけ、「ラカントS」の商品名で発売しました。
砂糖と同じ甘さを実現し、より使いやすくなったことで、さまざまな「ラカント」の応用商品が開発されます。2012年には、エキスの純度をより高めることで、砂糖のような白さとおいしさを実現した「ラカントホワイト」も誕生しました。
アメリカで急成長する「LAKANTO」
カロリーゼロの「ラカント」は、カロリーや糖質などの摂取制限のある方に限らず、ダイエットや美容・健康に関心の高い層にも広がっていきました。さらに近年は、化学合成による甘味料が敬遠されるようになり、天然素材でカロリーゼロの甘味料ニーズは世界的に拡大しています。
特に「シュガーフリー」が自然派食品のキーワードとなっているアメリカでは、安全性の高い自然由来の甘味料への関心が高く、羅漢果は「MONKFRUIT(モンクフルーツ=僧侶のフルーツ)」という呼称で親しまれています。サラヤは2015年9月、ユタ州リンドンにSARAYA USA, Inc. DBA Lakantoを設立。「ラカントS」(海外ブランド名「LAKANTO」)を発売し、健康・機能食品として注目されています。
「ラカント」をより多くの食卓へ
商品開発のみならず、サラヤは「ラカント」を使った体にやさしい低糖質レシピを提案。ウェブ上で多様なメニューを公開しています。
さらに2018年には、東京都内に「ラカントS」のコンセプトショップとして「神宮前らかん・果」をオープン。「ラカント」と天然素材を生かした低糖質のランチ、ディナーを提供し、お客さまに「ラカントS」の魅力を体験いただいています。
「予防」の理念から挑戦を始めた、サラヤの甘味料開発への挑戦は、40年余の時を経て、今や世界に求められる「ラカント」に結実しました。さらに、原料である羅漢果そのものも、抗酸化作用、血糖値上昇抑制作用、抗糖尿病作用等が見いだされ、生活習慣病の予防と治療に幅広く役立つことが期待されています。
健康な生活習慣がますます重視される時代に、サラヤはこれからも「ラカント」を世界中の人々にお届けするとともに、羅漢果が「未来の神果」となれるよう、さらなる研究を続けていきます。
農園から最終製品までトレーサビリティを徹底
高品質な羅漢果栽培は、受粉作業も収穫も一つひとつ手作業です。植え付けから収穫までは長い日数がかかり、収穫後もエキスの抽出・精製と大変な労力のかかる工程を経て初めて「ラカント」の原料が完成します。
精製した原料は農薬検査を行い、カビや傷、大きさ、熟成度なども再度確認。日本国内に運ばれてからも、残留農薬、重金属検査を行い安全性を確保します。
化学合成の甘味料とは比較にならないほどの時間や工程が必要となる「ラカント」ですが、世界の人々の健康管理に役立つ商品であるためには徹底した品質管理が必要なのです。