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技術開発を知る

次世代洗浄剤から再生医療まで広がり続ける「ソホロ」の可能性

石けんや洗剤の洗浄成分である界面活性剤は、水と油を乳化する(混じり合わせる)物質です。その原料には石油系・植物系があり、性質に応じて洗浄剤に用いられてきました。実はそれ以外に、石けんとも合成界面活性剤とも違う「第3の界面活性剤」として、生物由来の界面活性剤「バイオサーファクタント」の存在が1960年代に明らかになっていましたが、その工業化は困難を極め、実用には至っていませんでした。
創業から天然素材を用いて環境や人にやさしいモノづくりを続けてきたサラヤは、石けんと洗剤の両方に対する実績と研究知見に加え、少しでも可能性があるのなら挑戦するという企業風土を持っています。21世紀に向けて、新たな洗浄剤の開発を目指していたサラヤは、持ち前の探究心でこの難題に挑みました。



「発酵(fermentation)によるバイオサーファクタント」であることを明記した「ソホロ」のシンボルマーク。「ソホロ」は一般名称「ソホロースリピッド」の原料としての商品名です。


ソホロ技術の歩みと応用分野の拡大


①1997年〜「バイオサーファクタント」実用化への挑戦

洗剤の歴史を変える次世代の洗浄剤誕生

石油系合成洗剤による水質汚染と肌疾患が社会問題になっていた高度経済成長期、1971年にサラヤは手肌と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を発売し、エコ洗剤の代名詞となりました。そして21世紀を前に、地球温暖化への対応、持続可能な原料調達、超低毒性(低刺激性)などが新たな課題となる中で、その解決に向けてサラヤが挑戦したのが「バイオサーファクタント」の実用化でした。
当時サラヤは自然派甘味料「ラカント」の研究・開発で発酵技術を用いており、日本古来の酵母の発酵の力に着目していました。天然酵母に植物油と糖分を与えて発酵させると、油を分解する成分「ソホロースリピッド」が生成されることが知られていたからです。しかし酵母は生き物。当初はうまく「ソホロースリピッド」はできませんでした。しかし、決して諦めずに実験を重ねること2年。原料や酸素の配合など絶妙な発酵バランスを突き止め、ついにソホロを安定的に作り出すことに成功したのです。
サラヤは早速、その商品化に着手。泡立ちが低く洗浄力が高いソホロの特性が見事に生かされる食洗機用洗剤として、2001年に発売を開始しました。


「ソホロ」産生プロセス


世界初の天然界面活性剤配合食器洗い機用洗剤「ソホロン」


②2002年〜 「ソホロ」の可能性を追求し、さまざまな特徴を発見


ソホロの実用化に成功した後も、この画期的な界面活性剤を生かすために、さまざまな角度から特性を探る研究が進められました。そして分析が進むとともに、基本特性である洗浄力、低起泡性、すすぎ性、生体・環境適合性に加えて、多様な特徴が明らかになります。



2002年 「医療器具洗浄剤アセザイム」低起泡性で浸漬槽を⾒やすく、合成洗剤フリーへ
2004年 石けん改質効果を発見
2005年 酸型SL開発に成功、液体処⽅の展開を開始
ソホロと酵素の適合性を発見し、液体酵素洗剤への展開を開始(PQシリーズ)
経⽪吸収促進性を発見
2007年 巨大ベシクル形成能を発見
2008年 吸着抑制効果(すすぎ性)を発見
2011年 環境放出された放射性物質の除染にソホロを活⽤。環境洗剤への適⽤

【「ソホロ」の優れた環境性能】

ソホロは、天然酵母由来の界面活性剤。天然酵母は常温で発酵するため、高温にするための熱エネルギーが不要で、製造工程での二酸化炭素排出量が削減されます。また、排水後は微生物によって水と二酸化炭素に完全に生分解され、すばやく地球にかえります。


③2012年〜 特徴を生かした商品化 「ソホロ」利用の応用拡大


「ソホロ」利用の応用拡大

Happy Elephant

ソホロの高い生分解性、高い洗浄力、低起泡性とすすぎ性、高い安全性を生かした未来の洗浄剤「ハッピーエレファント」。ソホロの原料となる植物油(パーム油)には、環境と人権に配慮されて生産されたRSPO認証の植物原料を使用。持続可能な社会実現に貢献する次世代の自然派ブランドとして、サステナブルな洗剤の代名詞になることを目指しています。


Lactoferrin Lab.

感染予防研究の過程で着目していた免疫システムに関わる乳タンパク質ラクトフェリンに、肌への高いエイジングケア効果があることを発見し誕生した化粧品「ラクトフェリン ラボ」。ソホロはその特徴である生体適合性と経皮吸収性を生かして、ラクトフェリンを肌の奥(角質層)へと届ける天然の浸透促進成分として配合されています。


Jojoble

天然肌バリア成分として知られるホホバオイルを用いた自然派ケア化粧品「Jojoble」。ホホバオイルにグリセリンとソホロを加えることで、水によって乳化する非水系オイルゲル製剤を実現。濡れた肌にも伸ばしやすく、また角質層までの浸透力が向上。美肌成分をすみずみまで届ける化粧品に応用されました。


④2020年〜 「ソホロ」未知の可能性を拓く


土壌洗浄、再生医療、そして未来の商品へ

ソホロの研究で近年明らかになってきた“洗浄剤”以外の機能は、既存の商品の枠組みを超えて、サラヤを新しい事業分野へと導いています。
今後もソホロに秘められた未知の可能性を一つひとつ追求し、人と環境の「いのちをつなぐ」サラヤの挑戦は続きます。

ソホロ×ファインバブル ▶︎医療用器具の洗浄剤・消毒剤

ソホロに炭酸塩と有機酸を組み合わせた製剤を水に加えるとファインバブルが発生。医療用器具の洗浄剤・消毒剤への応用が期待されています。


ソホロ×生体適合性  ▶︎細胞用冷凍保存液

生体適合性の高さを活かして細胞用凍結保存液として応用。ソホロを配合することで、従来の保存液の課題だった細胞毒性や抗原体変化などを低減し、融解後の細胞生存率を高めることができます。


高細胞生存率の 細胞保存液 「SOFORO Cryo (ソホロ クライオ)」

ソホロ×環境適合性 ▶︎汚染土壌の洗浄剤

工場跡地やガソリンスタンドの土壌洗浄などに用いられるバイオレメディーション(微生物の力で油を分解する技術)にソホロを添加することで、効率的に土壌洗浄し、工期の短縮ができるかを検証中です。


ソホロ×再生医療  ▶︎脱細胞化用水溶液

再生医療の世界では、脱細胞化後の組織や臓器の内部構造への影響が少ない処理方法が望まれており、ソホロ水溶液を使った脱細胞化を検証中です。


脱細胞化の流れ